コーヒーを通して考えるSDGs

date
2023.03.28

最近ではもう当たり前となった「SDGs」という言葉ですが、実はコーヒー業界にとってもSDGsは重要なキーワードとなっています。SDGsというワードが発表される以前から、コーヒー業界ではフェアトレードやサスティナビリティー […]

最近ではもう当たり前となった「SDGs」という言葉ですが、実はコーヒー業界にとってもSDGsは重要なキーワードとなっています。SDGsというワードが発表される以前から、コーヒー業界ではフェアトレードやサスティナビリティーに関して多くの議論があり、業界としてどう向き合っていくべきかが検討されてきました。コーヒー業界とSDGsがどう関係しているのかを知れば、私たちが普段の生活で飲むコーヒーを通してどのようにSDGsに貢献できるのかが見えてきます。

 

そもそもSDGsとは?「持続可能な開発目標」

SDGsとは2015年に行われた国連サミットで採択された国際的な開発目標のことを指します。正式名称は「Sustainable Development Goals」で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。具体的には2030年を期限として持続可能な世界を目指すべく、17のゴールと169のターゲットから構成された国際的なアジェンダとなっています。その内容は発展途上国・先進国共に積極的に取り組んでいかなくてはならないものとされ、日本政府も目標の達成に向けて様々な取り組みを行なっています。

 

・スペシャリティーコーヒーとSDGsの関係

スペシャリティーコーヒーという言葉は日本ではかなりメジャーになってきましたが、実際にスペシャリティーコーヒーってどんなコーヒーなのか?というとあまりピンとこない人も多いのではないでしょうか。しかし、この「スペシャリティーコーヒーであること」とSDGsは実はとても大きなつながりがあります。その理由には、スペシャリティーコーヒーの条件として掲げられている3つのポイントが関係しています。

 

スペシャリティーコーヒーの3つの条件:

  • ・クオリティー(品質)
  • ・トレーサビリティー(透明性)
  • ・サスティナビリティー(持続可能性)

 

コーヒー業界では、この3つが担保されたものをスペシャリティーコーヒーと呼んでいます。つまり、スペシャリティーコーヒーとは品質の高い豆であることはもちろん、実際に1杯のコーヒーになって消費者の元へ届くまでの買い付けや貿易のプロセスに透明性があり、かつサスティナブルなものでなければなりません。

 

SDGsの中でコーヒー産業と関係のある項目は?

SDGsにはゴールとして17個の項目が設定されています。どの項目もそれぞれ関連している部分があるので、広義ではどの分野もコーヒー業界と関係があるともいえますが、その中でも特にコーヒー業界と深く関係している項目は6つあります。

 

・ゴール1「貧困」:貧困をなくそう

フェアトレード(適正・公正な取引)という言葉はもう今では常識となってきましたが、コーヒー市場に置いてはまだまだ大きな課題といわれています。一般的なコーヒーの市場価格は主にNYやロンドン株式市場での先物取引によって決められます。世界的な需給の変化や気候変動なども影響するため、生産者の努力や品質に対して正当な価格が払われずに不況にあえぐ農家が出ることも少なくありません。

一方で、多くのスペシャリティーコーヒーショップや大手チェーンなどではフェアトレードを掲げ、サスティナブルな豆の直接買い付けを重要視し、独自に適正価格で買い付けをしているところも増えてきています。消費者としては、そういった適正価格での買い付けを行なっているコーヒーショップやブランドを選んでコーヒー豆を購入するだけでもSDGsへ貢献することができるといえます。

 

・ゴール5「ジェンダー」:ジェンダー平等を実現しよう

ジェンダー間の不平等はコーヒー業界でも根強く残る問題です。一方で、コーヒーの生産を通した女性のエンパワーメントも、以前から各国で行われてきました。その核ともいわれるのがIWCA(International Women’s Coffee Alliance)です。2003年にコスタリカで設立され、現在はNYに本部を置き、31カ国に支部を持つNPO法人です。コーヒー業界における女性の地位向上と持続可能な社会生活の実現を目的として活動をしています。

 

・ゴール8「経済成長と雇用」:働きがいも経済成長も

コーヒーの生産が産業として確立し、生産設備への投資や努力に見合った対価が得られるようになれば、立派な経済成長へと繋がることもあります。その大きな例が、ルワンダのコーヒー生産です。1994年に起こったルワンダでのジェノサイド(大量虐殺)を経て、ルワンダは大きな経済危機に陥りましたが、その後大きな復興運動が起き2000年代には大きな経済成長を遂げました。その中でも生産改革が行われたコーヒー産業の貢献は特に大きかったといわれています。現在ではコーヒー豆はルワンダの輸出産業の実に25%も占めており、約40万人がコーヒー産業に関わっているとされています。実際にコーヒーを主要産業としている国も少なくはないため、コーヒー産業がきちんと機能し健全に成長していくことは、こういった発展途上国の経済成長や安定を左右する大きな要因といえます。

 

・ゴール10「不平等」:人や国の不平等をなくそう

スペシャリティーコーヒーの条件として「トレーサビリティー(透明性)」というものが掲げられているように、流通や価格の内訳などが曖昧なまま、生産国や労働者が搾取されてしまうことは未だに多く発生しています。特に、コーヒー生産国は発展途上国が多く、消費国は先進国がメインになることから、不平等な取引が発生しやすい環境にあります。コーヒー豆に適正な価格をつけて買い付けを行うだけでなく、輸送コストや税金にいくらかかったかなどを明白にし、生産者や仲介業者などに公正に利益を分配することが求められています。

 

・ゴール12「持続可能な消費と生産」:つくる責任・つかう責任

最近では、マイカップの使用を推奨し「マイカップ割」を取り入れたり、テイクアウトのカップやストローを再生可能なものに切り替えたりするカフェも増えてきています。日本でのスペシャリティーコーヒーの先駆けともいわれているブルーボトルコーヒーでは、ゴミや無駄をなくすという意味の「ゼロウェイスト」を掲げ、店内でのストローの提供を廃止したり、土に還る素材のテイクアウトカップを採用したりしています。スターバックスコーヒーなどでも、コーヒーのカスを堆肥にする取り組みを行なっていたりと様々な企業努力が行われています。

 

・ゴール13「気候変動」:気候変動に具体的な対策を

「コーヒーの2050年問題」というのをご存知でしょうか。現在、地球温暖化の影響を受けて気候変動が起きていますが、このままの勢いで気温の上昇が止まらなければ2050年にはコーヒーを栽培できるエリアは現在の50%まで減ってしまうといわれています。そのため、コーヒー業界において環境への取り組みは重要な課題となっています。

現在は、コーヒーの栽培や精製方法の見直しといったことはもちろん、環境に配慮して生産されたコーヒーに認証を与えるなどの取り組みが行われています。有名なのでは社会・経済・環境という持続可能性の3つの柱に基づいて行われている「レインフォレスト・アライアンス認証」などがあります。

 

コーヒーを通してSDGsにどう貢献していくか

コーヒー産業における消費者として私たちができることは大きく分けて2つあります。

 

1. サスティナブルなコーヒーブランドやカフェを選択する

簡単なことですが、消費者としての意識を変えて「コスパ」や「手軽さ」だけでなく、SDGsの観点から信頼のできるブランドやカフェを選択する、そしてそれを日常的に行なっていくことはとても重要なポイントです。企業ができる努力ももちろんたくさんありますが、消費者側の意識が変わらなければ、どんな取り組みも続けていくことはできません。コーヒーを買うとき、カフェに入るとき、あえてスペシャリティーコーヒーの店にいってみたり、フェアトレードマークやフォレスト・アライアンス認証のマークのあるものを買ってみたりしてみましょう。

また、身近なコーヒーブランドの中にもサスティナブルな取り組みに積極的に取り組んでいるブランドがあるはずです。例えば、UCCは「2030年までに自社ブランドを100%サスティナブルなコーヒー調達に」することを目標として掲げています。地元の小さなカフェなどでも、エコに取り組んでいるところがあったり、独自の取り組みを行なっているところがあるかもしれません。そういった店やブランドを応援し、自分の消費に責任を持つことも大切なSDGsです。

 

2. マイカップ・マイキャニスターでゴミの削減を

テイクアウトの際に使われるカップやリッド(蓋)で排出されるゴミは以前から大きな問題になっていました。最近はコロナの影響もあり、店内でも紙カップでの提供を希望される人も多いですが、できるだけマイカップを利用したり、すぐ飲んでしまう場合は蓋なしやストローなしでテイクアウトしたりなど、身近なところから取り組んでいきましょう。また、海外ではすでに定番になってきていますが、コーヒー豆の量り売りをやっているお店では、マイキャニスターを持参するのもおすすめです。

 

エコでおしゃれ!おすすめマイカップ

最近は、エコカップ自体も土に還る素材であったり、リサイクル素材から作られていたりするものが増えています。見た目もかわいいものが増えているので、これを機にお気に入りマイカップを取り入れてみてください。

 

・Kaffeeform ウィデューサーカップ

コーヒーを抽出した後に残る大量のコーヒーかすを再利用して作られたエコカップです。ドイツのベルリンを拠点とするブランドで、ブランド創設者のジュリアンがカフェで大量に廃棄されていたコーヒーかすをリサイクルできないかと考えたところから作られたアイテムです。日本ではまだ取り扱いが少ないですが、他にもマグカップやプレートなども出しているのでぜひチェックしてみてください。

 

・Blue Bottle Coffee エコカップ

土の中で分解可能な新素材で作られたエコカップです。竹繊維をメインにコーンスターチなどが使われており、エコなカップとして人気のアイテムです。

 

コーヒーを通して身近なところからSDGsの実現を

SDGsというと、なんだかとても大きな世界目標のような気がしてしまうかもしれませんが、身近なところから私たちにできることはたくさんあります。というより、私たち消費者の意識の改革こそが大きな鍵といっても差し支えないほど、SDGsの実現にとって消費者の行動は重要なものといえます。1杯のコーヒーから世界のことを考える良いきっかけですので、この機会にぜひ自分ができるSDGsを考えてみてください。